成果報酬制度の粗相を斬る(2005.07.18)
俺が原子力プラントエンジニアから、経営コンサルタントに転進したのは、
確か29歳のころで、今から約17年前。
そんな昔でも俺が転職したコンサルタント会社は、斬新な賃金制度を導入していて、
とにかく稼いだ金の1/3が自分の給料になった。
一人で受注して、指導するにはマンパワー的に限界はあったが、
それでも1000万単位で持って帰る奴が何人もいた記憶がある。
俺を雇う経営者の方も、
「社長より給料の多い社員がいても何らおかしいことはない。
みんな頑張って、自分よりどんどん稼いでくれ」
と言ってはばからないような、そんな社風だった。
当時としては、どちらかと言うと珍しいタイプの賃金制度だった。
そのころは、年齢給とか、学歴給とか、あるいは勤続給とか、
そんな旧来の賃金制度を踏襲する会社が、業種を問わずほとんどだった。
確かに、事業内容や業務内容がシンプルな時代においては、
学歴や勤続年数にリニアに比例して、業績が上がっていく、という図式もあったであろう。
だから学歴給、勤続給もある面、合理性を有していた、とも言えるのだ。
ところが、コンピュータをはじめ技術が長足の進歩を遂げ、経済はグローバル化していった。
その過程において、事業内容や業務内容はどんどん高度化され、
もはや、学歴とか勤続年数とかで、業績を評価することなどできなくなってしまった。
今では、学歴は低くとも、年齢は若くとも、そして勤続年数が短くとも、
仕事ができる奴はわんさかいるし、またその逆も然り、である。
だから、昨今成果に応じて給与額を決めるという、
成果報酬制度があちこちで導入され始めたのは、むしろ自然の流れと言えるだろう。
2004年の長者番付第1位は、投資会社のサラリーマン部長で年収100億。
実質的には経営者らしいが、それでも未だかつてなかったことだった。
おそらく年収の何倍もの収益で貢献しているはずだから、
100億払ったって会社には何の損もない。
日産の役員報酬は、一人当たり平均2億8800万円。
40代の執行役員でも年収数千万に手が届くらしい。
ところが、この成果報酬制度、概念だけを聞くと、
まことに理にかなった制度のように思えるが、実はそう簡単に導入できるものではない。
企業が利益を上げていく過程には、色んなプロセスがある。
色んな部署の、色んな担当者がそれぞれ役割を果たし、それが複雑に絡み合いながら、
売上が上がっていき、コストが下がっていく。
その、売上が上がり、コストが下がっていく過程を詳細に分析し、
関与する全ての部門、全ての担当の役割、言い換えると利益貢献度を明確にする必要があるのだ。
極論すると、カオス理論におけるバタフライ効果のように、社員から役員にいたるまで、
全社員の一挙手一投足が利益にどう影響を与えるのかを、明文化する必要がある。
そういった、利益が上がっていく、綿々たる過程を紐解きもせず、
乱暴に成果を定義して、社員を踊らす企業が多い。
いや、多いと言うより、ほとんどと言っても過言ではないだろう。
日産の役員報酬、2億8800万。
業績比例らしいが、どの行動、どの実績が報酬に跳ね返っているのか、実に興味深い。
いずれにしても、きちんとした成果報酬制度が導入されれば、
どう行動すれば、何を学習すれば、部門の、そして会社の利益がどの程度向上し、
結果として自分の給料にいくら跳ね返るのかが見えてくるようになるから、
企業の収益パフォーマンス、学習パフォーマンスは大きく改善されていくだろう。
その一方で、今まで安住していたサラリーマンにも粛清の嵐が吹き荒れることになる。
富士火災海上保険の例は、決して他人事ではないはずだ。
男性は勤続二十三年の営業担当。
成績が悪いと給与が一定割合で差し引かれる同社の制度で、
六月の給与は額面十一万五千円となった。
所得税や社会保険料などが控除され、約二万二千円しか支給されなかった。
さらにこの営業マンは、
振込額を見た妻から『間違いではないか』と言われ、ショックだった
と語ったらしいが・・・。
翌月の訪問スケジュールと過去の受注確率を見れば、
来月自分の給料がいくらになるのかくらいは小学生でもわかるのだから、
52歳にもなって、もっとしっかりしてくれと言いたくなる。
それにしても今後は、きちんとしていない、粗雑な成果報酬制度で成果を定義され、
意味なく、クビを切られる、というケースも出てくるであろう。
そう、駄目な社員の首を切るための、成果報酬制度。
それは結局、企業にとって、
最も成果のある制度に違いない。
祝!人事部目標達成!
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