救急患者、たらい回しの粗相を斬る(2006.10.25)



奈良の妊婦が、分娩中に意識不明となり、

19の病院をたらい回しにされた挙句、1週間後に脳内出血で亡くなった。

我が子との対面を待ち望み、十月十日を育てきった母親の無念を思うと本当に胸が痛む。

残された夫や家族、そしていつの日か、

新たな悲しみが胸に刻まれるであろう子供に対して、同情の念を禁じえない。



新聞報道などを読むと、色んな要因が絡み合って生じた事件だから、

死に至るまでに、もしあそこで・・・と言う場面があちらこちらに見受けられる。



担当医師がCT検査を行わず、脳内出血を見逃したことがそもそもの発端ではあるが、

それ以外にも、なぜ搬送先が決まるのに5時間も、6時間もかかったのか。

なぜ、搬送先が数十キロも離れた、吹田の病院なのか。

満床だから、麻酔医がいないから、子癇で母体が対応できないと判断したから・・・。



もし、この妊婦が身分の高い家の女性だったとしたら、

満床であっても場所を確保しただろうし、麻酔医も呼び出したろう。

産まれてくる子供の命の重さに違いがあって良いはずはない。

例外なく、国の宝、なのだから。



表面的には、色んな原因が考えられるが、

突き詰めると産婦人科医の減少、という問題が根底にあるのではなかろうか。



日本産科婦人科学会によると、新人の医師約8000人のうち産婦人科を目指すのは300~400人。

その3分の2は不妊治療や婦人科を志し、お産などの周産期医療は100人程度にすぎないらしい。

少ない理由のひとつは、苛酷な労働環境。

出産日調整で、土日に産まれる子は少ない、とはよく言われることだが、

基本的に、お産でいつ呼ばれるかわからない。



そして、もうひとつの理由が、医療訴訟。

産婦人科医は医師全体の約5%と少ないが、医療事故訴訟の約12%で当事者になっていると言うのだ。

歳をとって半ば老衰で死ぬ場合は、遺族も諦めがつこうが、

子供が死んだり、病気になったりするとそうは行かないのだろう。



このような理由で産婦人科医を志す人間が少なくなっている上に、

臨床研修医制度の導入により、卒業後の若い医師が減ってしまったことも拍車をかけているらしい。

大学病院の産婦人科に医師の派遣を依頼している全国1096病院のうち、

大学が派遣を取りやめ、
産婦人科医が全くいなくなった病院が全体の11%、117施設にのぼると言う。



俺が昔仕事でよく行っていた、島根県の隠岐島では派遣されていた医師が引き上げられたため、

今春ついに、
常勤の産婦人科医がいなくなったという。



産婦人科医と言い、小児科医と言い、子供にとって必要な医者が、特に地方では壊滅的な状況である。

医は仁術とは言いながら、金儲けのための忍術くらいにしか思っていない医者もいると思うが、

医者のモラールがどうこうではなく、医者不足の解消は国としての課題であろう。





少子化問題が叫ばれて、既に久しい。

育児休業法を初め、子育て支援のための環境は少しずつ整備されてきている。

また、安倍新内閣も教育再生会議を発足し、立派な子供を育てるための教育の重要性を訴えている。



いずれも、誠に重要なことである。





重要なことではあるのだが。






























まずは、安全な出産ではなかろうか。


産道がボトルネックになっている。


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